Legere Synthetic Bassoon Reed に驚きました

Légèreに頼んでいたSynthetic Bassoon Reedがカナダから届きました。2012年6月末にようやく正式販売を開始したそうです。
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1本毎にシリアル番号が入っています。ようやく正式販売になったものの、生産が難しいらしく、数が作れないので、当面直販のみのようです。

気温や湿度に関係なく、使用前に水につける必要もないので、すぐ使えるのが利用上のメリットですが、クラリネットの普及状況を見ても音質面でも十分使えそうだと思って入手してみましたが、普通に使う分には違和感はほとんどありません。

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パッケージは1本毎にプラスチックケースに入っていて、簡単な取扱説明書付き。価格ですが、多分、随時変わると思いますが、私の場合は1本125 CDN(カナダドル)でした。今日のレートで9800円弱です。普通のリードよりは高いですが、これまでの開発費や耐久性を考えると、まあ妥当な値段かと。

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通常のリードとの外観上の差ですが、材質はポリプロピレンでブラスのチューブで固定されています。左が通常作っているサイズのリードで、全長56mm、右のLégèreは54mm。ブラスのチューブ部分が15mm、チューブからボーカル部分にはみ出しているのが1mm。振動部に見える透明部分が38mm。上下の2枚の振動部はシールでごく薄く(オーボエのフィッシュスキン程度)繋がっています。両端が根元から先端まで上下くっついている、つぶしたストローみたいな形状です。ワイヤーはありません。これでそれなりの音が出ることが驚きです。

これだけ形も違って、ワイヤーも無くて、ボア形状も異なる製品が出来たということは相当なイノベーションだと思います。製品開発は相当大変だったと思います。

今回はSOFTを2本購入しました。ケーンよりだいぶ硬いので、リードナイフでは削れません。硬さ(強さ)の調整は熱湯に3分ほどつけた後、指で挟んで押して開き具合を調整します。冷えるとその形で固定されます。一番重要な調整は開きの調整だけです。他の通常のリードで行なっていたような調整は難しいですし、同じ効果が出るとは思えません。最初に吹いてみた感じでは、SOFTといってもちょっと強すぎたので、開きの調整をしました。

誰もが気になる音ですが、下記にサンプルを置きました。全てLégèreで吹いたものです。(曲はさらってから録っているわけではないので、吹けてないのはリードのせいではありません)
なお、ボーカルは前の記事にも載せたEpees Bocal FF No.1 です。

1. Telemann: Sonata – 1st movement
http://www.takabon-bsn.com/temp/legere/MP3/120805_1-telemann-1mov.mp3

2. Telemann: Sonata – 2nd movement theme
http://www.takabon-bsn.com/temp/legere/MP3/120805_2-telemann-2mov-theme.mp3

3. Telemann: Sonata – 3rd movement
http://www.takabon-bsn.com/temp/legere/MP3/120805_3-telemann-3mov.mp3

4. Telemann: Sonata – 4th movement
http://www.takabon-bsn.com/temp/legere/MP3/120805_4-telemann-4mov.mp3

5. Saint=Saens: Sonata – 3rd movement
http://www.takabon-bsn.com/temp/legere/MP3/120805_5-saint-saens-3mov.mp3

6. Mozart Sonata K.292 – 2nd movement
http://www.takabon-bsn.com/temp/legere/MP3/120805_6-mozart-K292-2mov.mp3

驚くべきは違和感の無さで、普通に吹けます。音質もちょっと聴いた感じでは大差ない感じです。我が家では通常のリードと差が感じられないということでした。(Violine弾きの発言ですが、、、)

購入当初、練習開始時のデイリーエクササイズとエチュードの練習に使えるだけでもかなり有効だと思ってましたが、普通に本番も吹けそうな感じでした。なんといっても、扱いが簡単で、いつも同じコンディションで使えるのが画期的です。

最新ボーカル Épées Bocal

バスーンの研究では他に類を見ない情報量、技術をもっている Kenmochi Bassoon Works からオリジナルボーカルが発売されました。
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Bassoon Bocal – Épées Series (エペ ボーカル)
タイプは4種類あり、各タイプの特性は下記のとおり
AA type: 中庸な息流性で音律性も良く、バランスのとれたタイプ
FF type: 充分な量感性と豊かな表現性、滑らか感のあるタイプ
GG type: 音律性の良いフォーカス音質、息流性も良好なタイプ
SS type: 柔軟な発音性と表現性に富んだ安定感のあるタイプ
2009年に新しい内径を持った4タイプのボーカルの設計を終え、その年から、修理の合間にコツコツ製作を続けてきて、ある程度の本数が確保出来たことから販売を開始されたそうです。釼持さんお一人で完全にハンドメイドで製作されており、大量生産も難しい為、工房直売のみとのことで、先日、無理をお願いして急遽伺って試奏、選定させていただきました。
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4タイプ、それぞれの1番、2番を各5本ずつ、計40本試奏させていただきました。最初に開発の経緯やタイプの違いなどを伺って、いよいよ試奏でしたが、 既に試奏された方々が書かれているように、非常に精密に出来ており、 個体差がほとんど無く、僅かな違いを選ぶことになりました。Heckelのボーカルであれば、個体差も大きく、割と簡単に駄目なものを選り分けられるのですが、今回は悩みました。4タイプ共通して、滑らかで吹きやすく、上から下まで安定していて、 その上で、4タイプのそれぞれの特徴がありました。
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滞在時間が限られていたので、必死で選んで、FF No.1とAA No.2の2本購入しました。予算と財務省が許せばSS No.1も欲しいなと思いました(モーツァルトとかには最高な感じでした)。購入の際は奥様お手製のボーカルカバーがついてきます。柄がいろいろ選べます。

リードがそのままでも十分いけそうでしたので、オケの練習でいきなりブッツケでFF No.1使ってみたのですが、とても良かったです。未完成とアルルの女の1stを吹いてみましたが、うわずる箇所もなく、dim.がとても楽に出来ました。発音のコントロールも容易でした。このFF No.1ですが、手持ちのHeckelのボーカルのどれよりも良い感じで、いろいろ試して見ているところですが、YAMAHAの安定性とHeckelのPreWarの自由度を併せ持っているような感じがしています。吹いていてとても気持よく吹け、考えるとおりに表現出来ます。高音域でも滑らかで、思うとおりに息が入ります。オケの録音も聴いて確認しましたが、埋もれることなく狙った通りによく聴こえます。
これまでも各社のボーカルをいろいろ使ってきましたが、エペボーカルは別格の完成度があります。これから世界のオーケストラでエペ所有者が増え、評判が高まるのは間違いないとおもいます。

参考までに、これまでにエペボーカルの試奏、感想を書かれている方のリンクを追記しておきます。
Grazie del Fagotto
バスーンふぁんたじあ

最近はFacebookに書くことが大半で、すでにFBには感想をあげていましたが、めずらしくブログにも書く気になりました。